3.13

エヴァの話。
シンエヴァを公開日に観てきた。公開日以降、映画の考察や感想はSNSやブログでたくさん投稿されているようだが全く見ていない。なので評判に関しても知らないが、おそらく皆がそれぞれのエヴァの思い出を綴っていると思うので自分もそうしようと思う。
エヴァを知ったのは中1で部活の友達がきっかけで、彼の父親はなんとプラモの原型師だった。ある日その友達が「親父が作ったプラモを見に行こう」というので神戸元町のモトコーにあるプラモショップに行った。その店で友達が「これやねん」と言って指差したのがエヴァンゲリオン初号機だった。ガンダムウルトラマンかと思っていた俺は全く分からず「何これ?」と聞くと、今1番面白いアニメでエヴァンゲリオンだと言う。その時はTV放映が終わった直後だった気がする。実際にアニメでエヴァを観たのは約半年後で、深夜の再放送を録画したビデオをその友達から借りて観た。もうとにかくハマった。ハマりまくって中2の夏はエヴァばかり観ていた。深夜放送ならではの際どいCMも印象に残っていていて、いまだに「ハナテン中古車センター〜♪」を聞くとあの夏を思い出す。
毎日エヴァの事が頭から離れず、全話のタイトルをノートに書いて全て暗記したり、市川崑リスペクトのエヴァ文字を模写したり、加持さんの留守電メッセージを覚えて暗唱したりしていた。(1番のお気に入りは加持さんだった)
当時は自分の部屋にビデオがなかったので自室でいつでもエヴァを楽しめるようフィルムブックを買って夜はそれを読んでいた。もちろん謎解き本も何冊も買った。
トドメはその夏に公開された「the end of evangelion」だった。これで人生の価値観が狂わされた。
内容が面白かったのは間違いない。ただそれ以上にラストが衝撃だった。
LCLの海に囲まれた世界でシンジがアスカの首を絞め、アスカはシンジの頬を撫でる。涙を流し嗚咽するシンジのシーンが長回しで続いた後、アスカの眼球だけが動き一言「気持ち悪い」。すると画面が白くなり「終劇」の文字…その瞬間、劇場の照明が全て明転していきなり幕が閉まり出した。普通、映画はエンドロールが流れ徐々に明るくなり、さあ帰ろうか…が当たり前なのに、そういった手順を全部無視、一切の余韻を許さずいきなり現実に放り出された衝撃!この体験に打ちのめされた俺は放心状態で、一緒に観に行った友達(エヴァを教えてくれた友達とは別の友人だった)が早く消えねえかなと思いながら無言で帰った。
俺はエンタメは観客を楽しませ気分良くさせるものだと思っていたが、EOEは観客に対して強烈な悪意が向けられた作品だった。もちろん作り手の悪意が含まれたエンタメ作品は他にもたくさんあるが、当時はそんなこと知らなかったし、また映像を超えてリアルに及んだ体験のインパクトがデカ過ぎた。
後に庵野監督が置かれていた状況や、EOEがエヴァファンやアニメオタクとの決別がテーマだと知って納得した俺はオタクにはならず、代わりに庵野信者になって式日やLOVE&POP、彼氏彼女の事情などを観て、いかに受け手に媚びず、客をバカにして煙に巻くかみたいな価値観を至上としたサブカル方向に進むことになってしまった。
だが時は過ぎて、そんなサブカル絶滅危惧種になり、今では完全にオタクの時代だ。作り手は観客を愛し精一杯楽しませる。観客は作り手を愛し精一杯応援する。双方向に開かれたオタクカルチャーの楽しみ方は極めて健康的で大人だ。
そしてシンエヴァは大人になった庵野監督のエヴァやファンへ向けた2回目の決別だった。テーマに関してはEOEと変わりはない。悪意を持ってさよならを伝えるか愛情を持ってさよならを伝えるかの話だ。
今もシンエヴァの考察はあるかもしれないが、個人的には愛情に溢れたエヴァの裏読みをすることにあまり興味が持てない。何より庵野監督自身がいい意味でエヴァに全く興味がないように思えたので、やっぱりシンエヴァのテーマもEOEと同じく「みんな次に進みましょう」というメッセージであればいいなとは思う。であればEOEを観狂って文字起こしまでしていた自分も報われる。
なので素直に今まで楽しませてくれてありがとうございましたと言いたい。